2009年1月北海道に激震が起こった。道民にとってなじみ深い老舗企業である丸井今井の経営破綻である。民事再生により三越伊勢丹ホールディングス傘下として地域№1店奪回に向けて動き出した新生丸井。伝統と歴史を大切にしつつ、新たな船出に向けて着実に一歩ずつ歩みだした(株)札幌丸井今井取締役執行役員本店長である新藤信夫氏に復活に向けての熱い想いを聞いた。

原点に返る「お買い場宣言」
2009年1月29日。私どもの不徳の致すところでお取引先様、お客様はじめ多くの皆様にご迷惑をおかけしました。お客様に心配をおかけし、信頼を失った中で同年8月1日に新会社がスタートしました。文字どおりマイナスからの出発であり、丸井というブランドに対してお客様の視線は極めて厳しいものと受け止めております。その一方で多くの方々に支えられて丸井今井という名前を残していただきました。それは、138年におよぶ歴史の中で過去に弊社で働いていた先輩達が、その時代ごとにしっかりやってくれていた積み重ねのおかげだと感謝するとともに残った私どもの責任を果たしていかなければと感じています。

民事再生によって私どもの原点は「お客様にある」ことから始めました。その一つとして「売場」という言葉は止め「お買場」に改めました。お客様に楽しんで買い物をしていただく。丸井に来るとドキドキ、ワクワクするそんな百貨店にするため、とにかくお客様の声を聞くことが大切だと実感しています。そのために販売員は、気配り・心配りが当たり前に出来るようになる必要があります。気配りは「けはい」心配りは「しんぱい」と書きますが、お客様が何か困っている事やご要望がないかという「けはい」をいち早く察知して、相対する。お客様のために何をしたら良いのか自ら考え、行動することを全お買場で約束しています。単に商品を販売するのではなく、お客様からこの販売員がいるから相談や買い物に来るといった満足以上の感動を与えられるような社員教育を施していきたい。この当たり前のサービスを行うことによって、また丸井に来たいと思っていただける百貨店を目指しています。
丸井では、3月から「オンリーアイキャンペーン」を実施しています。婦人バックを例にとると、お客様からこういう商品にしてほしいという声をお聞きしながらお取引先様と共同で開発しました。商品一つひとつにこだわりがあり、実際にお客様が使い勝手の良さの要望の積み重ねから出来たものですから人気も高い。伊勢丹の商品開発力を生かしたやり方ですが、衣料品から食品までジャンルは広がっており、今後は丸井でも積極的に展開していきたいと思っています。
地域とともに生きる
北海道経済は、依然厳しい状況が続いています。百貨店全体の売上は、実質31カ月連続対前年マイナスで推移しています。リーマンショック以降は、余分なものは買わないという傾向が見受けられ、安定していた婦人服も買い控えが出ています。その中で健闘しているのは食品です。催事の「全国うまいもの大会」は、多くのお客様に喜んでいただいております。北海道の食品を扱っている「きたキッチン」は当初の予想を上回る人気であり、同様に東京に出しているアンテナショップの「北海道どさんこプラザ」も好調です。全国各地の百貨店も人気№1は北海道物産展です。丸井今井は道産子の百貨店ですので、北海道の良い商品、商材をご供給いただいている道内各地のお取引様と手を携え、全国の皆さんに発信することが私どもの使命だと思っています。
札幌は、大通と駅前ゾーンで商圏が分かれています。しかし、単に競合するだけではなく、お互い良い所は尊重し、ともに高めあっていくことが大事だと思います。現在工事を行っている札幌駅と大通を結ぶ地下街、創成川緑地化によってお客様が買い回りしやすくなる環境が整います。まちを一つひとつ見てみると路面店やビルの中に良いお店が一杯あります。単に百貨店間の競争というよりヨーロッパのようにまちを歩きながらショッピングを楽しむ、そんな札幌らしいスタイルで消費が活性化されていくことが望ましいのではないでしょうか。
再生への誓い
2009年8月に新生丸井としてスタートしました。感謝の気持ちをいつまでも忘れないため社長の関根以下役員全員が開店の時にお客様をお迎えしております。お客様には私どもが至らない点をドンドン言っていただきたい。お叱りの言葉をいただくことによって改善のヒントを得られ、一つひとつ対処することが丸井を良くすることに繋がっていきます。三越伊勢丹ホールディングスの一員となってシステム統合などこれから大きな仕組みが入ってきますが、最終的にはお客様に喜んでいただくためのソフトの充実が何よりも大切です。「いつも発見、すてき新発見。旬が薫る、丸井今井」のスローガンを胸に、全社員と一緒にもっともっと元気になり、近い将来に地域一番店に復活させることが私に課せられた仕事だと考えています。
